柔らかな裏切りを 生唇で受け止めて 虚しくなるだけで 上等だって笑えよ 風はまた吹くだろうか 遠ざかる記憶を手繰る 獣に堕ちたあなたの眼 もう一度くださいって 失うごとに欲しがって どこにもきっかけなど 落ちていないとい […]
カテゴリー: 現代詩
傘を持たない人
雨の日に傘を持たない人は もれなく優しい人でしょう 降り注ぐ雫に身を預けながら 微笑みを知る強い人でしょう 雨の日に傘を持たない人は もしも誰かの物語のなかで 誰かが死んでしまったならば 祈ることができる人でしょう その […]
点
コバルトブルーの夕暮れに凪いだ点 立ちくらみすれば許される気がして あなたもあなたもあなたも当然に点 染みといっても差し支えないだろう 真っ白なシーツを私が敷いたはずの 純然たる欠点といってもいいだろう あなたが目を閉じ […]
開花宣言宣言
値札さえ与えられず 都合の悪さを携えて 焼きたてのパンのことを考えている 春、魔物を産んでしまったから 古アパートでほどけた安い自我が フリースタイルで追われ果てた ずっと笑っていたのが私で そばで泣いていたのが私で 逆 […]
春変
寝ぼけた顔して 幼い唇でぽろぽろと 退廃的なことを言うの 春だというのに 心臓くり抜くような 我儘ばかり振り撒くの きみは冬に眠っていたかったんだろうね 魚のような目をして 灰色の空を見ている 饐えた風の手土産を 嬉しそ […]
容疑者3名の円卓
論客R氏が腕試しに 青い瓶の中身を知りたがり 詩人D氏が立腹して それは野暮だと吐き捨てる 主宰W氏は円卓にて ほくそ笑みながら足を組む R氏が求めるのは日常からの脱出方法 D氏が詠うのは牛肉へ捧ぐ鎮魂歌 W氏はぺろりと […]
キャラメル売り
シナプスの存在しない場所に 私はいる 私がいる あられもない姿で (キャラメルを舐めながら) 横たわっている 銀紙をくしゃくしゃに 気の済むまで丸め終わった残骸が 私の心臓だったとして キャラメルを舐め終えた 甘ったるい […]
私の庭(という強制的沈黙)
遠くで破裂音がして 目が覚めた青い夜は 寂しくなってもいい 冷たい廊下を裸足で歩いて 自分の首を絞めようとして でもできなくて泣きました カチューシャが似合わなくなって 夢の国だけでワンピースを纏って どんどん静かになっ […]
ポインセチア
迷妄をさらけ出した空は 雲をさらって落暉を隠す 真冬に凍える部屋の隅で 漸くまぶたを開いたのに 光を求め扉を開けた途端 冷たく降り注いだ視線が 私の脳天をずんと直撃し 紅い徒花を咲かせるのだ 私の思考はやがて白濁し 流転 […]
ラドリオ
息を止めないと 泳げない僕らだから 呼吸とは足枷のことだ 大空を飛んでみたいと 翼ばかり欲しがる僕らは 神さまのただの誤算だ 息を止めないと 苦しくなってしまう僕らの 息苦しさはもはや喜劇だ(笑え) 息を止めないと地球に […]