僕はボートを漕ぐ 他に誰もいない湖面に 流行らない一艘を浮かべ 僕はボートを漕ぐ 他に誰も見ていないから 好き放題に漕ぐ 湖面を波紋が支配する 僕のオールで起こしたそれは いびつに整列をしていく 波紋はすぐに消えていく […]
タグ: 現代詩
黒鍵
ピアノを食べたひとは ピアノが弾けない 幾何学模様の布の並んだ 小さな部屋に住んでいる蛾の 確信に満ちたうわごとである 面的に繙かれたアンビエントを 口の中でエゴと溶かしている 朝顔が咲き始めても ジムノペディは聴こえな […]
羊が凍る
生息域の考察は私に諦観を与え 大勢の前で偉人だった「彼」は 今や晒す恥や罪悪を探している 滴る筈の血は羊ごと凍り 私に妥協を教えてくれた 「彼」は時を見計らって 吐き捨てる科白を磨いて 銀の月に仕立て上げては 番号を与え […]
ケーキ
ホールケーキを等分にするためだけに アリスがナイフを振るう 縦に切って 横に切って 斜めに切って 反対側も斜めに切って ケーキは八等分になったけれど 春、夏、秋、冬、雨、雪、雷、風、アリス テーブルには九名座っていたから […]
Good-by chalon(dreaming forever)
街を歩いていると、ああ私ってほんとうに独りなんだなと思えるから好き。万が一もう一人、私が向こうの道からのたのた歩いてきてもちゃんと無視できるくらいには強くなりました。失うべき音が一つもないこの街の唯一の汚点が私。とても心 […]
木を植える人
木を植えたいのです 誰のものにもならない場所に 誰にも識られることもなく もちろん誰のためでもなく これ以上眩しくないように これ以上騙されないために 独りでちゃんといられるように ああそれでも 僕の認識は否が応でも 大 […]
アルバトロス
すべての痛みが 癒されるためにあればいいな すべての悲しみが 許されるためにあればいいな すべての傷という傷が 優しくなれるためにあればいいな 裂かれた皮膚は かさぶたを経て強く生まれかわるね 神様もあの世も知らないけれ […]