イルミネーション

優しさなんて表明しなくても
塩麹に漬けた鶏むね肉を
焼くだけで伝わる想いがある 

愛なんて言葉にしなくても
一緒に洗濯物をたたむだけで
そばにいる意味は成立する 

疲れて帰ってきたら
お風呂を沸かすし
喉が渇いていたら
麦茶をマグに注ぐし
そうして日々は過ぎていく 

ずっとあなたの寝顔を見たいから
そっと手をかけようと思った
そんな日もあったよ 

いびつな三日月に守られて
ふたり呼吸を続けている
柔らかな時間の中で
時々ケンカもするけれど 

今はわかるんだ
ふたりして白髪になれたら
ふたりしてシワくちゃになれたら
ふたりして果てられたら
それがたったひとつの
願いごとなんだって 

こときれた街は冬を迎え入れて
イルミネーションで誤魔化され
誰も誰の不幸を知ろうとしない 

ふたり揺れている
影をゆうらりゆうらり
イルミネーションの中に落として
鶏むね肉の焼き加減だとか
作り置きの麦茶だとか
丁寧にたたまれた下着のことを
まるで幸せかのように語る 

生きていくことと
死んでいくことは
そんなに変わらないと
生きていることと
死んでいくことは
ニアリーイコールだと
笑顔で教えてくれたね 

あなたの影になりたい
あなたの細胞になって分裂したい
あなたになってしまいたい
それ以外に術を知らないから 

私があなたを手にかけない理由が見つからない

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