NOVEL

Posted on 2018.3.21

【掌編】月兎

「君を、抱いていいの」 まるで罪の告白、或いはあどけない脅迫。それは前奏のないポップスのように明け透けだ。 私は許しを与えるように首を縦に振った。 「本当に?」 疑心暗鬼に支配された言葉。信じられないということは一種の弱 […]
Posted on 2018.3.21

【掌編】檸檬(告白)

金曜の夜の新宿を、傘もささずに歩く彼は、数多のネオンを睨み返しながら歩いている。その後ろを、訥々とした足取りで私はついていくのだ。 新宿駅を出てはじめて、雨が強まってきたことを知った。濡れながら歩くのは少ししんどい。 「 […]
Posted on 2018.3.21

【掌編】虫歯の国のアリス

やせ我慢を決め込んでいたけど、日増しに高まっていく歯の痛みに、芦花ありす(16歳、華の女子高生)は嫌々ながらついに歯科医院のドアを叩いた。 『ハートデンタルクリニック』という、街はずれにある小さなクリニックである。外観は […]
Posted on 2017.11.1

【短編】逝夏

「まるでショパンに対する冒涜よ。あんな弾き方ってないわ」 僕の『幻想即興曲』を水玉はそう評した。 「そうかな」 僕はこみあげる感情と一緒に指先で#ラを抑える。反論するわけではないのだが、僕にだってプライドの一片はあるので […]
Posted on 2017.11.1

【短編】俺のギターを聴け!

都内私立大学2年生の篠井久志は、大学生になって初めてギターを持った。マイペースを地で行く彼について、いくつかのエピソードをお話ししよう。 彼は高校までは生粋の茶道部で、和を尊ぶ少年だった。外見も、黒髪短髪の地味な少年だっ […]
Posted on 2017.11.1

【掌編】Amour

「ああ、あの子なら先日、天使になっちゃったよ」 苦笑混じりのその言葉に、僕は持っていた花束を薄汚い廊下に落とした。 「先日って具体的にいつですか」 やや責めるような口調になってしまうのが自分でも悔しい。 『白衣の天使』は […]
Posted on 2017.11.1

【掌編】そうだ、温泉に行こう

悠太の告白に対して、仕事から帰ってきた兄はネクタイを外しながら、少し考える素振りをしたかと思いきや 「そうだ、温泉に行こう」 と言った。 日本人は昔から、温泉で傷や病を癒してきたのだと。しかしながら、悠太の病気にも湯治は […]
Posted on 2017.11.1

【短編】物語のはじめかた

シンデレラや白雪姫……「お姫様」は、女子の永遠の偶像だ。幼いころ、毎日寝る前に母親に童話を読んでもらっているうちに、比奈子はすっかり絵本に出てくるお姫様に憧れを抱くようになっていた。 比奈子が絵本など読まなくなった高校二 […]
Posted on 2017.11.1

【短編】エビフライ

エビフライを揚げていたら、油が跳ねて目に入りそうになった。麻衣子は慌てて洗面所に駆けて、夢中で顔を洗った。というか水で乱暴に何度も拭った。 やだ、どうしよう、跡がついたらやだ。 顔にシミなんて、まだ勘弁だ。 台所から鈍い […]