プロローグ 告白

その夜の南大沢警察署は、悪質な飲酒運転の取り締まり対応に追われたものの、取り立てて大きな事件も起こらずに一日の業務を終えようとしていた。 加えてその年は長梅雨ということもあり、軽微な物損事故を起こす車も多発していた。 南 […]

放置

断言が断罪になるというのなら早く私を馬鹿と貶して この駅に快速列車が止まらないのも寂しさも私のせいだ 鈴虫に唆されて僕はいま誰も知らないソリストになる メロディを重ねるたびに嘘がほらバレていくから早く歌おう むかし観た映 […]

序章 神保町

いやに暖かい風の吹いた日、芽吹きかけた衝動を噛み殺しながら、彼は神保町を歩いていた。古本屋とカレーとサブカルチャーの香り漂うこの街に、彼は自分を遺棄する場所を探していたのだ。 その両目には諦観とひと匙の狂気のなり損ない。 […]

第一話 檸檬

金曜の夜の新宿を、傘もささずに歩く彼は、数多のネオンを睨み返しながら歩いている。その後ろを、訥々とした足取りで私はついていくのだ。 新宿駅を出てはじめて、雨が強まってきたことを知った。濡れながら歩くのは少ししんどい。 「 […]

第一話 落丁

東京都の西の隅っこの街のはずれにある、とある本屋。真弓がこの本屋でのアルバイトを決めたのは、今月入学した大学と一人暮らしのアパートのちょうど中間という好立地に加えて、カフェが併設されているからだった。真弓は自他ともに認め […]

第三話 マフィン

「あの、スミマセン……お客様……その……」 真弓が口ごもっていると、中野は「あーあーあー、」と手をひらひらさせて、 「真弓ちゃん、気にしなくていいよ。よくあることだから」 とフォローに入ってくれた。 「え、でも」 「気に […]